◆明治36年3月、大阪で開催された「第五回内国勧業博覧会」では、同時多才な催し物が行われた。
◆大阪での開催と言うことで、大阪にゆかりの深い「豊臣秀吉の馬印」に因み瓢箪の展示会が開催された。
◆日本美術協会大阪支部では中心的な役割をした森琴石であるが、この「千瓢会」への出品者は森琴石の周辺の人物が多い。下記に出品者の判明者をご紹介する。
「千瓢賞餘」 (日本美術協会大阪支会発行・明治36年8月)より 抜粋紹介
題字:藤澤南岳 / 緒言:会長 男爵北畠治房 / 軸写真:男爵北畑治房筆・藤田東湖筆(三枝興三郎所蔵)
出品者
大阪府(人数が多いので伝歴などの不明者は省略する)
大阪市
●石尾和(北区老松町3丁目)
銘:蝸牛、婦人達磨、皮付
●泉由次郎(北区川崎町) =大阪四区一郡連合会議員(明19)
●井上浅次郎(南区順慶町)= 「舞鶴市街地図」の著者兼発行者(大正11)
●磯野橘斎(東区大手町2)=大阪の名物 歯科医・島原生・東京から明24年大阪住
●稲葉先春園(東区平野町2)=茶舗
●西尾五福堂(東区伏見町)=煎茶道具商・森琴石煎茶スケッチに名あり
銘:賣茶翁米 花月庵主田中毛孔手識
●河井治兵衛(北区河内町2)=銘:二福人 揚城山人※題
※大村楊城=雅友知友「大村楊城」をご覧ください
●嘉納尚典(北区地下町)=趣味人
銘:半面 美人 竹雲
●金澤仁作(西区靭北通4)=衆議院議員(大正4)
●吉野五運(南区鰻谷中丿町)=薬種問屋・伊藤若沖を発掘した人物
銘:書画合作(山陽先生他7名)他
●吉本彦太郎(北区曽根崎中)=「ケチモト」の異名を持つ、吉本土地建物社長吉本晴彦氏の祖父
●玉手弘通(西区靭中通)=豪商・堂島米穀取引所初代理事長など
銘:入船式 香谷寫并識※(※村田香谷=森琴石親友)
●高崎親章(北区堂島浜通3)=大阪府知事・「懐徳堂」の発起人
●永藤朝翠堂(高麗橋三丁目)=骨董道具商・琴石煎茶スケッチに名がでる
●中村又之助(東区高麗橋)=歌舞伎役者
銘:雪達磨
●長坂雲在(北区太融寺町)=画家・ 森琴石友人・雅友「長阪雲在」、関連資料「一致帖」に名
銘:スキ子供
●村上一樹園(北区梅田町)=植木商・琴石の煎茶スケッチや「喜寿祝賀会茶会」展示に名が出る
●桑田墨荘(東区石町1=沢田吾一(大阪の医師)の知人・森下仁丹創業者「森下博」の若い頃職業を世話した
●山中精兵衛(東区高麗橋)=骨董道具商「春篁堂※」経営
銘:大氷、細永 など10点
※山中一族の山中春篁堂については「平成12年12月」をご覧ください
●山本憲(東区京橋2)=儒学者・漢詩家「山本梅崖※」の事
※山本梅崖=「平成17年6月■3番目、注6 略伝」などに記述
●藤田傳三郎(北区網島町)=大阪の豪商
銘:可酔 山陽外史 竹雲山堂識
●藤谷修竹堂(東区平野町2)=道具商
銘:好文 中井寫於洛東若王祠畔画禅堂 他
●藤澤南岳(東区淡路町1)=儒学者 「藤澤南岳」
●杲田隋翁(北区堂島中2)=杲田(こうだ)と読む・琴石妻身内※
※森家実曾祖母「ゑい」の身内、子息「美稲 *」は琴石の作品を盛んに斡旋 *「美稲」の妻は著名株式仲買人浜崎某の娘
●佐野五明渓、菊枝(北区小松原町)=書家
銘:金鵄 伝来王義之愛品
●菊阿彌(北区堂島中町2)=忍頂寺静村
銘:葉衣 篠崎小竹先生遺愛品ニシテ其後忍頂寺梅谷※丿所持セシモノト云
※忍頂寺梅谷=忍頂寺静村(森琴石師匠)→師匠「忍頂寺静村」
●志貴小岳(北区今井町)=日本画家
●鹿田静七(東区安土町4)=発兌書肆・森琴石書誌出版にも多く係わる
●平瀬亀之助(東区北浜4)=豪商・号露香・京都嵯峨天竜寺で禅を学び、国学漢学にも秀で、後大阪博物場長に就任する
無銘(頼杏坪書付)・銘芭蕉所持四山 など
●日野九郎兵衛(東区淡路町2)=道修町「大阪製薬会社」創業時の役員(明30)
中江式部大輔エ送リタル品ニシテ北野大茶湯ニ 出シタルモノト云
銘:瓢子之食籠 伝太閤秀吉公名護家在陣之節
●森琴石(北区高垣町)=無銘 2点
●世良田雨荘(北区若松町)=世良田信明の事 →雅友知友「世良田信明」をご覧ください
銘:傳春
●世良田信明(北区若松町)=上記「世良田雨荘」の事
銘:金箔地指物 尾張国源朝臣長秋ト朱記アリ
●関新吾(北区若松町)=備中川辺出身・花房義質※に関係する人物
銘:連理 西太后愛品
※花房義質=「平成16年7月■2番目」の「藤本鉄石先生薦場余録」記述項目に名あり
以下府県名・氏名・住所を列挙する
兵庫県
●生森荘太郎(神戸元町三丁目)●柴岡惟一(神戸市兵庫小川通 5丁目)●日外蔵(神戸市中山手通5丁目)
●橋本治作(兵庫県武庫郡大庄村)●豊島竹松(兵庫県兵庫島上町)●神野不老(尼ケ崎)
●富永包方(兵庫県淡路国鮎原)=淡路島の志士に名あり ◆「平成15年11月注4」
●西村六左衛門(兵庫県城崎町)=城之崎温泉老舗旅館「油筒屋」当主
●桂義性(兵庫県淡路先山千光寺)●栗飯原常世(明石郡明石町)●後藤常伴(明石郡明石町)
●北垣傳右衛門(朝来郡玉 置村)●中川欽之介(揖保郡網干町)●菅原寅五郎(印南郡曽根村)
●米村文吉(多紀郡篠山町)=篠山軽便鉄道株式会社 専務取締役※
※「森琴石翁遺墨帖」での所蔵者に名・森琴石喜寿祝賀記念品贈呈者に名あり
「兵庫県官民肖像録、大正7年」に、「米村文吉君(多紀郡篠山町)」に掲載=神戸市文書館
銘:山水・銘天然木瓢(寺西易堂・近藤南洲・五十川訊堂・藤澤南岳・谷鐵心・市村水香・江馬天江が銘文)
京都府
●大西善次郎(下京区古門前通大和小路)●笠井瓢鯰(上京区麩屋町御池上ル)
滋賀県
●井上義兵衛(甲賀郡三雲村)・吉田方水(長浜舟山町) 銘:奇友 如意山人題(谷鉄心)
●中北宗四郎(野洲郡河西村)
奈良県
●堀ノ内高潔(奈良県生駒郡郡山町)●玉井久次郎(奈良市東向町)●中村雅眞(奈良市)
●村戸賢徳(生駒郡家片桐村)●箕波金波(奈良市桜井町)●杉村辰三(奈良県法隆寺)
和歌山県
●佐野武一郎(和歌山市東鍛冶屋町)●彦坂小七郎(和歌山市福町)
三重県
●渡邊保春(桑名町)=銘:羅生門・利休筆羅生門利休瓢箪花入●松平祐左衛門(桑名市)=銘:鶴首 天江欽
●松本金(桑名市)=銘:福部炭取 松平越中守楽翁愛玩 托一上人自画 文晁遠船図
鳥取県
●金谷松蔵(東伯郡倉吉町)●武田要次郎(鳥取市二階町2)●正垣種太(東伯郡倉吉町)
●斎木太三郎(東伯郡倉吉村)
岡山県
●大橋平右衛門(備中倉敷)=倉敷市の豪商で江戸末期には町年寄を務める・娘慶は後の倉敷紡績創業者立石孫一郎と結婚し、その当時の立石は大橋敬之助の名である。大橋敬之助は倉敷で浅尾騒動を起した※。
※大橋敬之助など=「平成16年7月 ■2番目 注2」の「本城梅屋」文中にあり。
広島県
●今川治助(広島県尾道町)
山口県
●中尾彌右衛門(玖珂郡由宇村)●日野収(山口県萩町)
愛媛県
●岡本松石(伊予西条町)●三村羅風(新居郡西条町)●日野玉 邨(西条町)●仲田傳之(長+公)=松山市府中町
香川県
●入谷盛敏(仲多度郡垂水村)●長尾松太郎(高松市田町)
高知県
●徳弘太む(高知市通町)=読み方:「とくひろたいむ」=真鍋豊平の高弟で一弦琴奏者(一弦琴は須磨琴ともいう)・徳弘時聾(じろう)の別名
徳島県
●柏木直平(阿波郡林村)=銘豊公 銘文:岡本午橋(岡本斯文)
●三宅舞邨(美馬郡三島村)=三宅舞村(元達)とも書く・漢学者
愛知県
●渡邊鐵三郎(愛知県祖父江町)・横井興兵衛(名古屋市呉服町4)
岐阜県
●龍華空音(岐阜県美濃養老山)=著書「たすけ玉への断案」(法蔵館・明34)他●村上雄三(岐阜県美濃養老公園内)
長野県
●井村萬之助(下伊那郡飯田町)=呉服商・飯田市美術博物館の井村コレクション由来の人物
●太田虎三郎(長野県飯田町)●窪田次郎八(長野県下伊那郡飯田町)
神奈川県
田中友晴(都築郡中川村)=銘吸ふくべ
東京都
橋本要衛(東京都日本橋区葺屋町)●加藤為吉(浅草区西三筋町)●村田保(芝区高輪町)●廣島友三郎(本郷区元富士町)
長崎県
●岩永義郎(長崎県時津)●米倉漸二郎(佐世保元町)
大分県
●日名子太郎(別府町)=「別府―大阪」航路開設者・別 府町初代町長など
奥附
明治三六年八月五日印刷
同年八月十二日発行 定價金四拾銭
発行者 日本美術協会大阪支會
代表者兼印刷者 椋橋藤郎(大阪市東区南新町一丁目六十番屋敷)
印刷所 一萬堂(同所)
詩文付録
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寄瓢先生傳 |
岡本午橋(関係人物紹介「岡本斯文」をご覧ください) |
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畫瓢記 |
同 |
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七瓢詠 節三 |
同 |
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詠瓢 |
同 |
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小瓢歌 |
同 |
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瓢銘 |
山田松堂(逍遥游吟社メンバー※「山田迪」の事)
※「平成17年8月■5番目以下 注9,10」に記述 |
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同 |
岩崎秋冥 |
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瓢話 |
松村南洋 |
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フクベ説 |
山本梅崖 |
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瓢説 |
俳仙堂碌々 |
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酒瓢記 |
木村肅園 |
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千瓢会ニ寄スル |
一溪山人 |
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寄瓢懐舊 |
北門重胤 |
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歌三 |
北垣傳右衛門 |
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瓢丿賛 木下長肅子筆 |
藤谷修竹堂蔵 |
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同 大網和尚筆 |
米村文吉蔵 |
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