森琴石(もりきんせき)1843~1921
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森琴石 調査情報

平成10年10月~現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成23年(8月)

  残暑お見舞い申し上げます

今月の話題

森琴石旧蔵  ―虫類、爬虫類、両生類など 模写帖―

未解明な模写帖
模写画は森琴石、しかし落款名は「樵石 寿」・・・・・・森琴石は「博物画」も目指したか?



【1】

平成19年10月」では、森琴石がバラの愛好者で<自宅で栽培した薔薇は300種類に及び、800もの鉢植えのほか、垣植え地植えのバラが咲き乱れていた>事が『薔薇栽培新書』に記述されている事をご紹介しました。書物の編者「小山源治」は、京都博物会会員で、新種の蝶々を発見した事をご紹介し、「同19年10月【1】■末尾」では、


《明治20年「樵石壽」の名で、虫類・爬虫類、両性類等の精密画11枚が現存する。画・文字とも森琴石のものであるが、・・・・・「樵石壽」については不明であり謎でもある》・・・・・


と記述した。


森琴石が兼ねて博物画に通じており、当HPでも、「平成19年1月【1】」では森琴石が響泉銅刻で精緻な教材用の「掛け図」や挿画を担い、「平成19年1月【2】」や「平成19年9月【1】【2】」では「田中芳男」、「岡不崩」、「前田吉彦」、「小山源治」、「賀集久太郎」など、博物画を得意とする画家や、博物学者との関係がみられ事をご紹介した。

精密模写画帖の最後には、「明治廿歳次丁亥冬十一月下澣摸寫 樵石壽」と書かれている。つまり明治20年11月下旬に描かれたものである。


森琴石調査開始当初は、この模写帖は「樵石」という号を持つ”画家”が模写したものを<森琴石が所持していた>と捉え、樵石名の画家を必死で探したが、どの文献にも「樵石」名の画家は存在しなかった。「土肥樵石」という、森琴石とほぼ同年代の熊本出身の書家が存在するが、その当時の文人は、画も嗜んでいたので、書家であっても簡単な文人画は描いたであろうが、博物画ではレベルが違いすぎる。模写帖は、種類別に完全に整理されて描かれてはいないので、画稿ではなさそうである。


『森琴石作品集』に先立ち、森家には多くの学芸員や文学者の方々が”調査訪問”をして下さいました。『森琴石作品集』への執筆者の方々は勿論の事、その他には、現在骨董美術品鑑定で知られる番組の準レギュラーになられた方や、著名大学で教授し、学会や学術論文、あるいは著書発行などで活発に活躍中の方や、筆跡の研究をされておられる方もあり、それらの方々から、この「樵石 寿」と落款のある模写画帖は、筆跡、画共に森琴石が描いたものという見解、お墨付きを頂きましたが、「樵石」の名については未解明なままである。

 

模写された「明治20年」といえば、銅版画師としての「響泉堂 森琴石」は、一流の技術者、画師として確固たる地位を築きあげており、交流した中国画家からは、さまざまな画法をみっちりと受け、それらが自分のものとして身についた頃である。。そして、これからは画家としての本領を発揮していこうと、意欲満々の時期であったと思う。上記の博物画家や博物学者とは既に交わっていたと思われる。浅はかな素人の考えで間違っているかも知れないが、維新後の混沌とした美術界を生き抜く為に、森琴石は「博物画」も視野に入れていたのでは無いだろうか?
「樵石」は、博物画家として使う名前では無かったか・・・・・???


森琴石の画才の一面を示す資料として、下に「模写画帖」11枚の内から5枚分を画像でご紹介します。






 

森琴石摸写 「虫類、爬虫類、両生類」など



 

★注:下の画像は精度が低く、実物はもっと鮮明なものです。
★名称の読みに間違いがある可能性があります。



 

1枚目

カミキリ虫・キリギリス(3匹)

テナガ蜘蛛・ヒトサシ虫・蝿・すずむし

クサ蜘蛛・クツワ虫・エンビこおろぎ

ハタハタ・クダマキ(雄 雌)



 

2枚目

天道虫(3種)・蛺蝶・鎧蝶

灰花蛾・小蝶・柿蛾

繭蝶・鳳車(揚羽蝶の異名)・樗鶏(うちすずめ、蛾の仲間)



 

3枚目

ホタル・大バッタ・オハグロトンボ・ツチイナゴ

オニバッタ・クマ蟻・キチキチバッタ・ナキイナゴ・カマキリ

イナゴ・蟻・蜘蛛



 

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左下 「十一枚ノ内」 とあり


 

4枚目

タガメ・カマキリ(異種)・ヤモリ・クダマキ

葛上亭長(カツジョウテイチョウ:ハンミョウの仲間) ・艸虫

イナゴ・蟻・蜘蛛



 

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5枚目

馬大頭(ヤンマ)・トウスミトンボ・蜻蛉(クルマトンボ)・アキムシトンボ・クロトンボ・シオトンボ

蜉蝣(カゲロウ)・蜻誕(アオトンボ)・馬大頭(オニトンボ)



 

6枚目

クワガタ虫・螓(なつぜみ)・蚱蝉・小蜻蜒(青ヤンマ?)・黒ヤンマ

臭虫・土蜂・蜜蜂・蝉・川クモ・唖蝉・蝉の抜け殻

大蜂・蚊トンボ・春蝉・蚱蝉・蝿



 

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7枚目

鳳蝶・黄蝶・鉗蝶・黒馬蜂・羽蟻・大黄蜂・蜂

ウチスズメ・胡蝶・ギンマダラ・アマガエル・胡蜂

白蝶・蠮螉(じがばち=似我蜂)



 

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8枚目

螻(けら)・シャクトリ虫・角兵衛虫?

蟢子(きし=アシナガグモ)・毛虫・えんまこおろぎ・蝸牛(かたつむり)


 「明治廿歳次丁亥冬十一月下澣摸寫 樵石壽」とあり


 

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9枚目

蝿取蜘蛛・壁蜘蛛・黄蝶・蚕

絡新婦(じょろう蜘蛛)・ササガニ・山繭・蛾(雄 雌)

くさ蜘蛛・黒蛺蝶・蜜蜂・ヒヒル(蝶や蛾)の幼虫?



 

10枚目

とかげ・蟷螂(かまきり)・おおあしなが・壁銭(ひらくも)

オンブバッタ?・飛生虫(カブト虫)・マツムシ・ムカデ・手長蜘蛛・こおろぎ



 

11枚目(最終頁)

赤とんぼ・カエル・雨カエル・キトンボ・シカ蜂

ヒキガエル・アカガエル・トウスミトンボ・蜻蛉・細腰蜂・アブ・タガメ




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