森琴石(もりきんせき)1843〜1921
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森琴石 調査情報

平成10年10月〜現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成20年(12月)

 

今月の話題

【1】 情報ご提供2件
1:大阪老舗表具師「井口古今堂」の<取引先およびお出入り先住所録> に、森琴石の名
2:画家番附表
【2】 森琴石とパトロン
【3】 「南画独学揮毫自在」より・・・・・・森琴石の「牛」の銅板画

【1】

吹田市の「大塚融氏 注1」からは、当ホームページ「森琴石紹介 文献抜粋」での「浪華摘英より」など、これまでに多数の資料や情報のご提供を頂いています。当HPでまだご紹介出来ていない<画家番付>など2件お伝えします。

大阪の老舗表具師「井口古今堂」の<取引先およびお出入り先住所録> に、森琴石の名と共に”北区高垣町”の住所が書かれている事が判明 注2。大阪は船場、平野町の表具商「井口古今堂」の3代目「井口藤兵衛」は、明治から大正・昭和初期にかけて「日本一の表具師」と言われ、住友吉左衛門や藤田伝三郎・鴻池家などを施主(パトロン)に持ち、阪神間の御大家のお出入り職人として書画の表装に腕を揮った。余技の指頭画の名人でもあった 注3

美術品の修理や保存のために表装する表具師の仕事は、失敗を許されない。表具の対象となるものには、それに適した素材の知識が必要で、また古筆や古画の意味が判らないと、顧客の相談にのることができないので、漢籍や古画の素養を積み、各流派にまたがる茶道にも通じていなければならなかった。得意先の床の間の寸法なども頭に叩き込んでおく必要もあった。「井口藤兵衛」は、このようにたゆまぬ努力をし続け、施主との信頼関係を築き上げてきたのである 注3

森琴石は「北区北野高垣町」には、明治31、2年頃から住んでいるので、「井口古今堂」の住所録も、同年以降のものと思われる。

“画家番附 注4”は、昔から多種類のものが出されているが、発行者の意向が強く反映される場合もあり、画家を評価する資料としてとして、一喜一憂するものではないという。明治後期くらいからは、番附けの他、画家の「相場価格」が出始めた。文人気質の高い森琴石は、精神的哲学的なものに重きを置く”文人画家”にも相場をつけるという風潮を非常に嫌ったと推測する。「森金石」の後の号、「森琴石」の画号が書かれた、明治5年刊のものと併せてご紹介します。

 
 
注1
 

大塚 融氏=元NHK記者。経営史・数寄者研究家。現在石門心学「明誠舎」の理事を務めるなど多数の肩書きがあり、講演会や取材・著述など多才な活動をされておられます。

 
注2
 

「井口古今堂 住所姓名抄」より

左頁中央・・・・北区北野高垣町二四三四  森琴石
左隣・・・・・・門下舩田舩岳の親交者「江中無牛

井口古今堂 住所姓名抄

★資料ご提供=大塚 融氏

 
注2、3
 
「船場の職人文化とパトロン」(大塚融氏文/大阪市政研究 1987年秋号)より、一部抜粋要約させて頂いたものです。
 
注4
 

画家番付表

A:「古今名家 漢画要覧」(水口臥龍軒 清風鉄筆/明治5年)

不判優劣
3段目右から6人目・・・・大坂 森琴石

同段左端に、森琴石儒学の師「大坂 妻鹿友樵」 の名あり

古今名家 漢画要覧



B:「日本画家予選各付表」(審美付録 審美画会編集発行/大正5年改正)

2段目中央 左から3人目:特別席 大阪 森琴石

日本画家予選各付表



C:「当世百番付」  大正7年

日本画家番付・・・・上段左側 大関 森琴石(京都とあるが誤記である)

日本画家番付

B・C ご提供=大塚融氏

 
【2】

【1】では表具師とパトロンについて触れたが、画家にとって、芸術的環境が整い、経済的な保障が受けられるパトロンがあることは、大変ありがたい事である。古くは画家の才能に惚れ、支援するパトロンが多かった。明治期後期〜大正期くらいからは、投資の対象として支援者になる事が増えたという。

森琴石にも、特定の富豪の購入者があったようだが 注1、パトロンという間柄までには至らなかったようだ。 画風を顧客の趣向に合わせたりする事は、森琴石の文人気質に合わなかったものと思われる。 森琴石の画は一般人に多く購入されたという。 森琴石は、森琴石の画を求める人には、その人が払える(安価な)金額で応じていたという。 過去の冠展での入賞回数などで<相場>を作る事は決してしなかったという。

明治後期〜大正期にかけて、<朦朧体>という輪郭を引かない絵画がもてはやされた。様々な画風をこなせた森琴石だが、この様な風潮の時、あえて廃れる一方の”正統派南画” を守ろうと、南画の発祥地、尊敬する「沈 周」 (平成16年4月で記述) のようなの画家の手法の継承に努めた。

 
 
注1
 

森琴石の画の(富豪)購入者=森琴石の画は「鴻池(善右衛門)氏、安宅(安宅コレクションか)氏、出光(出光美術館か)氏に多く購入して頂いていた」と、亡父”森寿太”が生前語っていた。森琴石クラスの画家の絵画は、持ち主が、内外の賓客への手土産として贈られる事が多く、すでにそれら当時の所蔵者の元には無いと思われる。

 
【3】

2009年が良い年でありますように!!

森琴石の銅板画・・・・「牛」

「南画独学揮毫自在 」(森琴石著編出版/森明治13年)より
<巻四> 44丁

森琴石の銅板画「牛」

実寸は 縦 8,2cm 横 10.0cm


「南画独学揮毫自在=「平成18年12月」などに記述しています


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