森琴石(もりきんせき)1843~1921
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森琴石 調査情報

平成10年10月~現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成17年(1月)

現在確認出来ている「響泉堂森琴石」の銅版書誌類の中で、最初に手がけたとされるものは、故郷が愛媛県新居郡宇高町(現新居浜市)の漢学者「永田方正 ながたほうせい注1」の訳による「永田方正訳 暗射地球訳図 全」(大阪書林岡田蔵版・明治8年・神戸市立博物館南披松太郎コレクション)という、青と黄で彩色された銅版地図である。大阪の書肆は永田方正の書誌類を多数出版している注2。また日本人で最初に「新旧約聖書」を翻訳し注3、日本で初めてアイヌ語の文法書「北海小文典注4」を編さんした人物でもある。

注1 永田方正=人物については関連資料「永田方正」をご覧ください。
注2

永田方正抄訳によるもの(書肆は全て大阪)
  ◆暗射地球図解(群玉堂・明8.12)
◆小学人体窮理問答(ウヰルソン著他・岡田茂兵衛刊・明9.12)
  永田方正編によるもの(書肆は全て大阪)
    ◆万国史略字引:註釈(岡田群玉堂・明8,10)
◆万国地誌略字引(岡田群玉堂・明8,12)
◆日本略史字引:註釈(群玉堂・明9,2)
◆改正日本地誌略字引(群玉堂・明9.11)
◆改正小学読本字引(岡田群玉堂・明9.11)
◆博物教授解(岡田茂兵衛・明10,12)
◆作詩精選(積玉圃・明11,11)
◆日本略史字引(小野藤吉・明12,5)
◆新選普通作文千題(明24,4・増補3版)
などあるが、響泉堂刻のものが含まれているかどうかは、確認できていない。
  永田方正著によるもの(書肆は全て大阪)
    ◆万国史略問答(岡田茂兵衛・明10.10)
◆開化農商往来(関原利助・明治11.9)
◆小学修身談(大槻如電共著・柳原喜兵衛、三木美紀出版・明12.1)
◆改正日本地誌要略字引(大槻修二共著・柳原喜 兵衛刊・明12.2)
注3   ◆西洋教草(西洋教艸)〔一名・愛敬篇〕上中下3巻
    永田方正訳・明治8年3月・大阪、岡田群玉堂出版
注4   ◆「北海小文典」(永田方正著・出版者函館県・明16.6)
  開拓使次いで函館県の御用掛として遊楽部でアイヌ子弟の教育に専念した永田方正が編纂した最初のアイヌ語文法書。同氏は明治24年には「北海道蝦夷語地名解」を著わす。(北海道大学附属図書館、北方資料データベースより)
*愛媛県西条町出身者には、森琴石門弟「山名友石」がいる

森琴石の画の師匠である淡路国津名郡出身の忍頂寺静村(にんちょうじ せいそん)は阿波国富田浦弓町生まれの貫名菘翁(ぬきな すうおう・別号海屋)に書画を学んだ。「浪華画学校」での教師仲間「守住貫魚 もりずみ つらな」も阿波国富田浦の生れである。森琴石は阿波国、淡路国両地とはゆかりが深かったようだ注1。阿波国富田浦弓町生まれの「福田宇中 ふくだうちゅう 注2」は、響泉堂刻「名家奇文 近古史伝 上下注3」や「古今復讐 日本義列伝 上下注4」を編さんしている。福田宇中は、国会の開設と地方分権を進める事を設立目的とした「普通 社」が創刊した「 普通新聞 注5」の編集長を務めた明治9年頃、政府の新聞取り締まり強化により文筆活動に圧力をかけられていた。明治3年に起こった「稲田騒動」や明治7年より開始された政府の「屯田兵制度」により、淡路国や阿波国からは多数の人々が北海道の開拓移民となった。明治21年5月、新琴似(しんことに)に移住した井後麒三郎注6が出版した「阿淡偉人小伝注7」(非売品・大正10年12月)の著者も務めている。また大阪書肆による出版物も多い注8。明治9年、岡山では「西尾吉太郎」が新聞発行を思い立ち「山陽新報」発刊準備にとりかかっていた注9

   
注1   当Hpでは 最新情報「平成15年3月」「平成15年11月(第三項目)「平成15年12月」「平成16年6月(注釈の項目)」などで淡路島の人物をとりあげている。
注2 福田宇中(福田天外)=関係人物紹介「福田天外 ふくたてんがい」をご覧ください 。
注3   ◆「近古史伝 上下」 (明治12年5月出版)
  ■著述者:斉藤拙堂・中井履軒・村瀬拷亭・古賀(イ+同)庵・頼三陽・安積艮斎・梅辻春樵・長野豊山・大槻禎・葛西因是・橋本藍玉・高知徳・塩谷宕陰・藤田東湖・佐久間象山・林鶴染・江木せん・中村敬宇・宇田栗園・安井息軒・菊池三溪・蒲生精庵・藤田寒水・橋本晩翠・信夫恕軒・江馬天江・小野湖山・依田百川・井阪柳處
  ■編纂人:高知県士族 福田宇中(高知県阿波国徳島第一大区五小区富田浦町二千三百一番地
  ■出版人:大阪府平民 真部武助(大阪府南区長堀橋上二丁目第一番地)
  ■ 弘通所:▲東京、長野亀七・西京、佐々木惣四郎・竹丘文祐 ▲大阪、松村九兵衛・前川善兵衛・柳原喜兵衛・岡島真七・渋川徳治郎 ▲阿波国西新町二丁目、小川六右衛門
   
注4   ◆「古今復讐 日本義列伝 上下」(明治13年12月出版)
  ■内容:「曽我復仇」「佐渡復仇」「天文復仇」「天下茶屋復仇」「日比谷復仇」「伊賀復仇」など32話収録。
  ■著者:徳島県士族  福田宇中(阿波国名東郡富田浦町二千三百一番地)
  ■出版人:大阪府平民 真部武助(大阪市南区長堀橋上二丁目一番地)
  ■発兌人:愛媛県士族 中西又市(徳島県阿波国名東郡小山路百十四番地寄留)、徳島県平民 小川六郎(阿波国名東郡西新町二丁目負外三十二番地)
 
注5   徳島県の新聞変遷=徳島県最初に出来た新聞は明治6年2月「名東県新聞 みょうとうけんしんぶん」、その翌月「徳島新聞」(謳歌社・現在の徳島新聞とは別)が創刊された。明治9年4月19日に、徳島藩士益田永武(ますだ ながたけ)が「普通新聞(普通社)・現徳島新聞の前身」を創刊した。益田氏は社長兼主筆として、不定期刊でスタートし、創刊40日後の明治9年6月から日刊となる。新聞を武器に自由民権運動をすすめていこうと考えた。
   
資料ご提供=石川文雄氏(徳島新聞社 メディア局資料調査部)
注6   ◆井後麒三郎新琴似移住=徳島県立文書館資料による。
◆井後麒三郎=五代前の井後家第七代「井後宗俊」は徳島籠屋町の医師。医師荒木尭民の師。(阿淡偉人小伝より)
注7   ◆阿淡偉人小伝=阿波、淡路のおよそ100名の偉人を収録。序文:阿部宇之八、識:福田天外、題字:蜂須賀茂韶公爵。奥附:大正12年10月発行・発行兼印刷人 井後麒三郎(札幌区北3条西三丁目)
注8   ◆国史濫觴(大阪知白堂, 明3.7)
◆和漢年歴箋(大阪前川文栄堂, 明9)
◆人体図解問答(大阪知白堂, 明9.7)
◆作文必携(志貴瑞芳共著.・大阪梅花書楼, 明10.4)
◆近古史伝(福田宇中他.・大阪真部武助, 12.5)
◆修身児訓字引(大阪北村孝次郎, 明15.3)  
◆小学中等科作文書(大阪積善館, 明15.7)
◆小学高等科作文書. 巻之2(大阪花井卯助, 明15.10) 
◆小学初等科作文書2版(大阪積善館, 明17.3)などがあるが、響泉堂刻のものが含まれているかどうかは確認出来ていない。
「国史濫觴」書誌情報ご協力=高知県立図書館
  徳島県立図書館には『大塩平八郎伝逸聞』(福田天外著)が収蔵されている。 (昭和35年徳島県史編纂委員会が、福田天外令息夫人から拝覧筆記した。「阿淡偉人伝草稿底本」に、別個に綴られたメモ書きのようなもの。)
  その他、福田宇中著篇さんの、大阪以外で出版された書誌類は省略した
注9   西尾吉太郎に関しては、最新情報「平成16年3月」の注釈6,7,8番目をご覧ください。
   

響泉堂森琴石の、四国や淡路島の銅版彩色地図には「阿波国全図 全」(松本 弘著・世渡谷文吉出版・響泉堂刻・明治10年・岐阜県立図書館世界分布図センター蔵)や「大日本四国一覧之図 附淡路之図」(森琴石編・大阪中川勘助出版・明治10年10月・神戸市立博物館蔵)などがある。

北海道大学附属図書館(北方資料データベース・北大北方資料室、北海道関係地図)注1 には響泉堂森琴石による銅版彩色「新鐫大日本海陸全図(附)朝鮮琉球注2」が収蔵されている。

   
注1   明治10年 ・東京 山中市兵衛・長野亀七・畳物・千島諸島図あり、樺太はなし
注2 同地図 ※は佐賀大学図書館にも収蔵されている。森琴石と佐賀の関係は、最新情報「平成13年1月」をご参照ください。出版:大阪 小川新助・岡田茂兵衛、発行;東京 山 中市兵衛・長野亀七・明治10年
  同地図は京都大学附属図書館、関西大学附属図書館、大阪府立中之島図書館、国立国会図書
同地図の「出版依頼」を受けたと思われるメモ書きは、「平成16年7月」に記述している。
   



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