森琴石(もりきんせき)1843~1921

森琴石 調査情報

平成10年10月~現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成22年(4月)

  今月の話題

【1】森琴石親交者
建部聴山について-----森琴石旧蔵資料等より
【2】書誌紹介
齋藤 希史 著『漢文スタイル』 (羽鳥書店 2010年4月刊 2,730円)


【1】

平成20年1月【1】■5番目」及び「平成22年1月【1】」などでご紹介した「建部聴山(聴山)」は、森琴石が親交した文人の一人である。恐らく江戸末期からの知己であると思われる。『浪華の魁 注1』や農商務省版『絵画出品目録 注2』によれば、明治15年頃には大阪に住み、本名を六右衛門と言い、画も嗜む趣味人だった事、建部姓又は建野姓だったようだが詳細は不明。「森琴石 断髪弾琴之図」の賛からは、聴山が七絃琴の愛好者だった事が推測される。しかしその他の人物像や生涯などの詳細は不明である。森家には、森琴石著「題画詩集 注3」や、森琴石の旧蔵品の小画帖や小屏風など、建部聴山の足跡や交流人物を知る作品が残されている。


森琴石旧蔵”小画帖”は、森琴石を含む9家が詩画を揮毫している。その中、明治8年「小原竹香」が寄せた五言律詩の末尾には「乙亥春 遊嵐山二律之一 録似 聴山詞兄正」とある事から、この画帖は「建部聴山」の依頼で「小原竹香・聴山(本人)・森琴石・高陽寒史・寺西易堂・水原梅屋・寒泉・波部竹城・九江(小山?)」等が詩・書・画を寄せたもの。聴山は「えびと小魚」を描いている。この小画帖は後年、森琴石が聴山から譲り受けたようだ。


揮毫者中、「高陽寒史」及び「寒泉」については人物が特定出来ていないが、他の7人は森琴石の親交者である事から、この画帖は建部聴山の交流関係を示す資料であるが、森琴石周辺の交流者を知る資料でもある。小画帖の概要は来月度にご紹介させて頂く予定です。


森琴石旧蔵小屏風の揮毫者は「浅井柳塘」、「天野方壷」、「汪雲」、「小原竹香」、「行徳玉江」、「建部聴山」、「藤田秋晴」、「波部竹城」の8氏。年代は明治13、4年頃のもの。この小屏風については、後月にご紹介の予定です。

注3 に「題画詩集」での聴山の書を、注4 では森家に残る小画帖での「小原竹香」の五言律詩及び「建部聴山」の画、注5 では小屏風での「建部聴山」の画をご紹介します。


 

注1

農商務省版『絵画出品目録(二冊)』(明治15年10月/国文社第一支店発売)
絵画出品区分目次(大阪)
第三区  支那南北派 (一)魚   南宋派    号聴山   建野六右衛門

注2

『浪華の魁』(垣貫一右衛門編/明治15年1月刊)
有名諸大家:翰墨賞古諸派  建野聴山:雑魚場 ⇒関連資料:大阪の有名諸大家

注3

『題画詩集』 ・・・・建部聴山の書





★揮毫年:己卯小春=明治12年10月



建部聴山の書があるもの

● 『墨場必携 増補題画詩集 三』
森琴石編輯/北村宗助、吉住音吉出版/吉岡平助発兌
明治12年11月21日御届

● 『墨場必携 題画詩集 森琴石編輯 下』
明治12年11月21日御届
森琴石編輯/北村宗助、吉住音吉出版/吉岡平助発兌
明治13年6月8日翻刻御届
同年7月 刻成発兌
翻刻人 石田才次郎(京都府)

● 『墨場必携 題画詩集 森琴石編輯 森琴石編輯 下』
翻刻御届 明治13年4月18日
原版主 吉住音吉外一名
反刻人 山田浅治郎(神奈川県)

★題画詩集については「平成18年11月【1】注5」をご覧ください

★上記以外の『墨場必携 新編題画詩集』では第3冊目の揮毫者は藤沢南岳、山本竹雲(但し森家所蔵分)。

 


注4

森琴石旧蔵小画帖  より


右:「五言律詩」・・・・・・・小原竹香
左:「えびと小魚図」・・・・ 建部聴山



サイズ=縦11.5cmx10.25cm              サイズ=縦11.5cmx横20.5cm



建部聴山:「えびと小魚図」



 倣田水月意
    田水月の意に倣(なら)ふ。


注釈
「田水月」・・・
 明代の文人画家「徐渭」
(徐文長、1521-1593)」の号の一つ。

印=聴山

小原竹香:詩(五言律詩)


山色展重碧     山色 重碧を展(の)べ、
春光自爛然     春光 自(おのづか)ら爛然。
有橋斜渡月     斜めに月の渡る橋 有りて、
無店不臨川     川に臨まざるの店 無し。
小瀑花間落     小瀑は 花間に落ち、
香雲水道鮮     香雲は 水道に鮮やかなリ。
撫来風景美     風景の美を撫(と)り来たるも、
才筆愧三船     才筆は三船に愧づ。

乙亥春 遊嵐山二律之一 録似 聴山詞兄正 竹香棟
  「乙亥の春、嵐山に遊ぶ」の二律の一、録して聴山詞
  兄の正 に似(しめ)す。


注釈
「三船」・・・・・白河天皇の時、才能のある人々を三艘の舟に乗せ、舟遊びをしたという故事。
「乙亥」・・・・・・明治8年
「似」・・・・・・・示す。

   




 
 


 
小原竹香は森琴石著「墨香画譜」への題字揮毫者(平成16年1月)。森琴石師匠「忍頂寺静村」の墓碑銘を撰文している ⇒師匠:忍頂寺静村。その他「明治15年8月注1」に記述など。

★賛、詩文の訓み、解釈=松戸市・小林昭夫氏

 


注5

森琴石旧蔵小屏風 より


建部聴山「山水図」

(絹本・サイズ=縦19.2cmx横28.5cm)




遊印=即事多所

落款
辛己晩秋為琴石画兄雅属併秋翁墨
聴山居士寫  印=聴山

<注>辛己晩秋=明治14年10月



★落款、印の読み=成澤勝嗣氏(早稲田大学文学学術院 第二文学部 准教授)

 


【2】

「掲載情報:論文など(平成17年11月)」では、齋藤希史著「漢文脈の近代--清末=明治の文学圏」をご紹介しましたが、この度、齋藤希史氏より同氏の新刊著書「『漢文スタイル』をご送付頂きました。
漢詩や漢文が不得手な方にも、無理なく読み進めていく事が出来、知らず知らずの内に知識が増えていく。・・・・・・そのような一冊です。羽鳥書店の紹介文をお知らせ致します。


 

『漢文スタイル』


~隠者・詩人・旅人たちがめぐる読書の宇宙~

不楽復何如!――こんな楽しみまたとない


中国古典文学と清末―明治期の言語・文学の研究者である齋藤希史氏によるエッセイ集。東京大学出版会の『UP』誌連載中の「漢文ノート」(1~12回)や『芸術新潮』2008年8月号・北京特集の「北京八景――記憶された町」など、計22編を収録。著者がひらく漢詩文の世界。国を超え、時代を超えて隠者・詩人・旅人たちがめぐる読書の宇宙へと読者は誘われ、ともにひとときを游ぶ……。いわゆる授業科目としての印象を持たれがちな「漢文」をあえてタイトルに掲げ、漢文脈の可能性と、漢詩文の世界の楽しみ方を伝える一冊。

単行本: 306ページ
出版社: 羽鳥書店 (2010/4/13)


その他
 【中国・書籍】 見せチャイナ 東方書店  など

★齋藤希史氏は、当HP 掲載情報:論文(平成21年11月):『中国─社会と文化』の編集委員を務められています。


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